過労死・内部告発・その他

家族の過労死、内部告発、会社の倒産、失業給付・労働災害保険給付の請求など、労働に関するどのような問題についても迅速・丁寧に対応いたします。

(1)過労死について

脳出血、心筋梗塞などの脳・心臓疾患は、動脈硬化などの基礎疾患が加齢や日常生活の様々な要因と影響し合って悪化し発症するものですが、とくに、長期間の業務上の疲労の蓄積による脳・心臓疾患死(いわゆる過労死)は、業務上の有害因子が特定できない疾病(または死亡)であるため、「業務上」の疾病(または死亡)と認められ、労災保険が適用されるためには、「業務に起因することが明らかな疾病」(労基法施行規則35条別表1の2第9号)に該当する必要があるとされています。

(2)過労死の認定基準

そして、厚労省は、過労死の認定基準につき、横浜南労基署長事件判決(最一小判平成12.7.17労判785-6)を受け、改定を行いました(H13.12.12基発1063号)。主な改正点は、
ⅰ)発症直前から前日までの間に異常な出来事に遭遇したこと
ⅱ)発症前1週間にとくに過重な業務に就労したことに加え
ⅲ)発症前の長期間(6か月)にわたり、著しい疲労の蓄積をもたらすとくに過重な業務に就労したことも、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな「過重負荷」として、業務起因性を認めることとしたことです。この「過重負荷」は、労働時間、不規則勤務、拘束時間の長短、出張の多寡、交替制勤務、深夜勤務、作業環境(温度・騒音・時差)、精神的緊張から判断され、とくに労働時間については、「発症前1~6か月にわたって、1か月当たり45時間未満の時間外労働である場合は、業務と発症との関連性が弱く、発症前1か月間に100時間または発症前2~6か月間にわたって、1か月当たり80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強い」という具体的な基準を示しています。
なお、現場の写真撮影や一緒に働いていた人や目撃者から早急に事情聴取するなどして、証拠の収集・保全に努めることが肝要であり、これが後々の手続の帰趨を決定します。

(3)内部告発について

労働契約は、労働力を使用者の処分に委ねることを内容とし、人的・継続的な関係を基本とする契約ですので、労働者と使用者間の信頼関係が重要視されます。つまり、労働者は、労働契約を締結することにより、労働契約上の付随義務として誠実義務を負っており、その1つとして使用者の秘密を保持する義務があります。そして、多くの会社の就業規則において、労働者に対し秘密保持義務が課され、あるいは名誉・信用の失墜行為が禁止されており、これらの違反は懲戒処分や解雇の理由となり得ます。
その意味で、内部告発は、通報対象とされた会社にとってみれば、秘密の流出や名誉・信用の毀損につながる面をもっています。そこで、内部告発が在職中の労働者によってなされた場合、当該労働者に対し就業規則違反を理由として、懲戒処分や解雇を行えるかといった問題が生じます。
従来の判例によれば、内部告発の「正当性」の有無を判断し、正当性が認められるものについては、解雇等の不利益処分から保護されていました。平成18年4月1日に「公益通報者保護法」が施行されたため、今後、内部告発の正当性の判断は、公益通報者保護法の保護要件に基づいて判断されることになりますが、基本的に従来の判例の判断枠組みから大きな変更はありません。つまり、公益通報者保護法の保護要件を満たさない内部告発であっても、「正当性」が認められるものについては、従来通り、解雇等の不利益処分から保護されるというわけです。

(4)内部告発が正当化されるためには

内部告発の「正当性」については、従来の判例によれば、以下のような事情を総合的に考慮して判断されるといえます。

内部告発の真実性

告発内容が真実であるか、あるいは真実であることが立証できなくても、真実であると信じるに足りる相当な根拠があることが必要です。これが、内部告発の「正当性」を判断する上で最も重要な要素であり、この要素を欠く告発行為は、虚偽もしくは軽率な行為とみなされ、多くの場合、保護されません。

目的

内部告発の目的が公益性を有するか、あるいは少なくとも加害目的がないことが必要です。告発内容が真実であっても、不当な目的(例えば、権力闘争の一環としてなされる場合など)がある場合は、保護されないことがあります。

手段・方法の相当性

告発先としては、(1)企業内での通報、(2)監督官庁、(3)マスコミ・一般住民などの第三者、が想定されますが、選択する告発先によっては企業業績への深刻な打撃となり、全労働者にとっても重大な不利益を招くことがあり得ます。そこで、企業内の公益通報窓口(ヘルプライン)が有効に機能している場合は、まず企業内部での改善努力を求める意味で、最初にそれが選択されるべきとして、それ以外の告発先を選択した場合に手段の相当性が否定される可能性もあります。

 

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